当院では大腸カメラは鎮静剤を使用せずに行っております。

大腸カメラの検査は一般的につらいというイメージが定着していると思います。その要因は大腸の構造に起因します。
胃カメラで検査をする食道、胃および十二指腸の構造に比べて大腸はその構造が個々人により多様であり、大腸の長さ、曲がり角の多さやその角度により内視鏡を盲腸まで挿入する難易度が大きく異なり、その苦痛の度合いも変化します。
そのため内視鏡を施行する医師の技術に大きく左右される検査になります。内視鏡技術が未熟な医師による大腸カメラを経験すると、とてもつらい検査として記憶されることは珍しくありません。

近年は大腸カメラ検査の苦痛を軽減する方法として、鎮静剤を用いた内視鏡が現在普及してきています。検査前に鎮静剤を静脈注射した上で検査を行ない、検査終了後に拮抗薬（鎮静を解除する薬）を注射する方法です。

鎮静剤使用のメリットとデメリットについて

メリット

鎮静のメリットは何よりも検査の苦痛を軽減できる、厳密にいうと苦痛があったことを憶えていないことです。実際カメラをしている最中はいくら鎮静剤を使用したとはいえ技術が未熟な医師が検査をすれば体には負担がかかります。但しその間の記憶が曖昧なため苦痛が軽減でき、結果的には楽に検査を受けられることになります。

デメリット

デメリットとしては鎮静剤の副作用である呼吸抑制（状況によっては酸素投与が必要な場合もあります）や血圧低下、不整脈等の負担です。高齢者においてはこれらの副作用が顕著に現れる場合もあり注意が必要です。また前向性健忘といって鎮静から覚めた後に起こったことも記憶にとどまらない場合があります。
また、検査当日は自転車や車の運転は危険を伴うため原則としてはできません。

胃カメラと大腸カメラの違い

胃カメラと大腸カメラの負担の大きな違いは痛みにあります。胃カメラをうけて苦しいと感じる場合はありますが、痛いと感じることはまずないと言っていいでしょう。しかし、大腸の場合には痛みを感じる場合があります。特に大腸の曲がりが強い場所を通過する場合に感じることが多くみられます。痛みは体の防御反応の一部のため、患者さんが痛みを感じるような場合にはその内視鏡操作を変更する必要があります。しかし鎮静をかけてしまうと、その痛みの訴えもうまくできない場合があるので注意が必要です。

画像提供：オリンパスマーケティング株式会社

視点を変えると、胃カメラと異なり大腸カメラは大腸の構造によって楽に検査をできる方が少なくありません。一般的には中肉中背～大柄な男性は大腸の走行構造が単純なことが多く内視鏡の挿入自体が容易なため、確かな技術を持った医師が検査をすれば痛みなく短時間で検査が終了しますので鎮静の必要は感じません。

鎮静をしなければ大腸カメラの場合には検査中に自身の大腸内を見ながら検査を受けることが可能ですので、ポリープ等異常があった場合でもリアルタイムで説明をうけられるメリットがあります。また、自転車や車の運転も検査後にすることがもちろん可能です。

一方で大腸内視鏡検査がつらくなると予想される方もいらっしゃいます。
体格が小さく痩せ型の女性は大腸の曲がり角が多く、角度が強いことがあり体の大きな男性と比較すると検査がつらい傾向にあります。また帝王切開や腹部手術歴がある方は大腸が癒着している可能性があり苦痛が強いことが予想されるため、鎮静剤使用での大腸カメラの良い適応と言えるでしょう。

まとめ

大腸カメラは確かな技術を持った医師が担当し、適応をしっかり検討すれば鎮静剤の使用なしで検査することが十分可能です。
一方で腹部手術の既往がある方や体格の小さな女性等は鎮静剤使用を検討しても良いと思いますので、医師と相談の上、方法を決定すると良いでしょう。