ピロリ菌は近年、胃がんや胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因の一つと考えられています。
正式名称を“ヘリコバクター・ピロリ”と言い、ヘリコとは「らせん状」という意味で、バクターとはバクテリア(細菌)、ピロリとは胃の出口で十二指腸へとつながる部分(幽門)を意味する「ピロルス」というラテン語の単語に由来します。この菌は胃の幽門部から初めて見つかったのです。
ピロリ菌の最も大きな特徴は、酸素の存在する大気中では発育しないことで、酸素にさらされると徐々に死滅していきます。
大きさは約3μm(マイクロメートル)で、4~7本の鞭毛(べんもう)を持ち、この鞭毛を高速で回し、その回転力で胃の中をドリルのように進んで、移動します。
ピロリ菌が強酸性下の胃の中で生育できるのは、胃の中にある尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、アンモニアで酸を中和することにより、自身の周囲の酸をやわらげているからです。
当院では、胃にピロリ菌がいるかどうかの検査を行っています。
胃内視鏡検査(胃カメラ)のほか、血液によるピロリ菌抗体検査や尿素呼気試験という検査で検査用の薬(錠剤)を飲み、呼気を調べてピロリ菌に感染しているかどうかを判定します。
もしも感染しているようなら、胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の予防のために、この菌の早期除菌をお勧めします。
(保険診療で行う場合には、6か月以内の内視鏡検査を受けるなどの一定の基準をクリアする必要があります。)
除菌には、高力価の制酸剤と抗生物質を1週間服用します。胃酸の分泌を抑えておいてから抗生物質でピロリ菌を除菌するのです。
服用終了後から約2~3ヶ月後以降に、除菌療法の効果を判定します。
この方法による除菌率は、わが国では70~90%と報告されています。
最初の除菌療法でうまくいかなかった場合は、違う薬を使って再度、除菌療法を行うことができます。この方法により、さらに90%以上の方で除菌が可能と言われています。
ピロリ菌に感染すると胃粘膜が炎症を起こし、胃の痛みや不快感、吐き気を伴う慢性胃炎や胃粘膜の組織が消えてしまう萎縮性胃炎へと進んでいきます。この萎縮性胃炎は胃がんの発症リスクが高い病態です。そして日本人の胃がんの99%にピロリ菌が関与していることがわかってきました。胃がんの発症を防ぐ意味でも、ピロリ菌の除菌が推奨されるのです。
胃の壁を傷つけ、胃を守っている粘液を減らし、酸の攻撃を受けやすくするので、胃炎や胃・十二指腸潰瘍を発症させる要因になります。
ピロリ菌が胃壁に取り付くと、細胞を弱らせてしまう毒素を出し始めます。すると、菌を排除しようとして血液中の白血球やリンパ球が付近に集まります。
両者の戦いが激しくなると、胃の粘膜が炎症を起こして胃炎になったり、胃や十二指腸の粘膜が深くえぐられて消化性潰瘍になったりすると考えられます。
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