予防接種は、細菌やウイルスなどの病原体からつくったワクチンを接種することによって特定の病気になりにくくし、また、たとえその病気になったとしても軽く済むようにします。
ワクチンは、感染症の原因となる各種の細菌やウイルスの病原性を弱めたり、また、それらを無毒化したりしてつくられます。これを注入することによって、体内に抗体*をつくらせ、接種以後、当該感染症にかかりにくくし、また重症化を防ぎます。
*抗体:病原体と結合し、それを体内から除去するように働くたんぱく分子。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスへの感染による疾患で、発症すると38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、寒気などの全身症状が現れます。併せて普通の風邪と同じように、喉の痛み、鼻汁、せきなどの症状も見られます。お子様では痙攣や中耳炎、稀には急性脳症を、ご高齢者や免疫力の低下している方では肺炎を併発するなど、重症化するケースがあります。
インフルエンザを予防する有効な手段の一つに、流行前のワクチン接種があります。インフルエンザウイルスは毎年少しずつ性質を変え、異なるタイプが流行するので、それに対応するために、予防接種も毎年行う必要があります。
接種費用は3,500円(税込)です。
令和6年度より江東区在住のお子さんへの接種助成が開始されます。助成額は2,000円です。
当院では高校生が対象となり1シーズン1回のみ助成されます。詳細は下記リンクをご参照下さい。
インフルエンザワクチンは、接種してから効果が出るまでに約2週間かかり、その効果は約5ヶ月間持続します。日本では、インフルエンザが例年12月~翌3月頃に流行するので、毎年10月下旬~12月に接種するのが妥当でしょう。
肺炎とは、主に細菌やウイルスなどの病原微生物が肺に感染して炎症を起こす疾患です。呼吸器の防御機能が病原微生物を排除できなかった場合や、病気やストレスなどのために免疫力が落ちている時など、つまり感染力が防御力を上回った際に、病原微生物が上気道から下気道、そして肺にまで入り込んで感染し、肺炎になってしまうのです。
がん、心臓病に続いて、肺炎は日本人の死亡原因の第3位を占めています(厚生労働省:人口動態統計(確定数)2013年)。高齢者*や慢性疾患を持っている方などは、肺炎にかかりやすく、しかも治りにくい傾向がありますので、要注意です。
*肺炎によって亡くなる方の約95%が65歳以上となっています(厚生労働省:人口動態統計(確定数)2013年)。
肺炎を予防するためにできることの一つに、肺炎球菌ワクチンの接種があります。
肺炎の原因菌で最も多いと見られるのは、肺炎球菌です(成人の肺炎の20~40%は、この菌が原因と言われます)。肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による肺炎などの感染症を予防し、重症化を防ぎます(ただし、すべての肺炎を予防できるわけではありません)。
接種は、1年を通して、いつでも可能です。ただし、5年以内に再接種を行うと、注射部位の痛みが強く出るケースがありますので、再接種を希望される方は、5年以上の間隔を空けてください。接種の年月日は、忘れないようにメモに残しておきましょう。
また、接種した部位が赤くなったり、腫れたり、熱を持ったり、痛むことがあります。しかし、通常は2~3日で治まります。その他、熱っぽい、だるいなど、体調に変化が生じた場合は、すぐにご相談ください。
インフルエンザワクチンの接種を併せて行うことは、肺炎予防の強化につながります。そのため、肺炎の予防には、肺炎球菌ワクチンだけでなく、インフルエンザワクチンの併用接種が推奨されています。
帯状疱疹とは、水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされるウイルス感染症です。帯状疱疹の症状には個人差がありますが、体の左右どちらかの片側に、神経痛のような痛み、赤い発疹、水疱が現れます。
痛みは、ピリピリ・チクチク針で刺されたような痛み、焼けるような痛みなど様々で、日常生活に支障をきたすほどの激しい痛みが出ることもあります。発疹は数日後に水疱となり、その後かさぶたになり2~3週間で治癒します。
顔面に帯状疱疹が現れると、角膜炎や結膜炎、まれに耳鳴りや難聴、顔面神経麻痺などの合併症が起こることがあります。
帯状疱疹の予防には、ワクチン接種が有効です。
帯状疱疹ワクチンは、帯状疱疹の発症を約8割、重症化を約9割防ぐ効果があります。また2回接種することで、より効果が高くなります。
帯状疱疹は一度発症すると、その後も再発する可能性があります。
加齢や疲労、ストレスなどで免疫力が低下すると、ウイルスが活性化して帯状疱疹を発症しやすくなります。
再発を予防するためには、日頃から十分な睡眠と休息をとり、ストレスを溜めないことが大切です。
帯状疱疹は主に50歳以上の人に発症し、日本では年間約30万人が発症しています。
50歳以上の人は、帯状疱疹の予防接種を受けることができます。50歳以上で帯状疱疹の発症率が高くなる傾向があるため、予防接種は帯状疱疹を発症しないための選択肢のひとつになります。
予防接種後の30分程度は、接種を受けた医療機関にそのまま留まるか、医師とすぐに連絡が取れるようにしておきます。接種部位に異常反応が現れたり、体調に変化が生じたりしたような場合は、速やかに医師の診察を受けましょう。
また、接種部位は清潔を保ち、接種後24時間は体調が変化する怖れがありますので、過激な運動や大量飲酒は控えるようにしてください。
人によっては、ワクチン接種後に注射部位が赤く腫れたり、硬くなったりすることがあります。発熱や頭痛などが見られることもあります。
ごく稀には、ショック、アナフィラキシー、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、脳炎・脳症、脊髄炎、視神経炎、ギラン・バレー症候群、痙攣、肝機能障害、黄疸、喘息発作、血小板減少性紫斑病、血小板減少、血管炎(アレルギー性紫斑病、アレルギー性肉芽腫性血管炎、白血球破砕性血管炎など)、間質性肺炎、皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)、ネフローゼ症候群などが現れることがあります。
このような「稀な副反応」の発生頻度は、数十万~数百万接種に1例程度と言われますが、何らかの副反応が見られたような場合は、念のため速やかに医師の診察を受けましょう。
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